AIで特許出願して拒絶された——3つのよくある原因

「ChatGPTで明細書を書いて出願したら、拒絶理由通知が届いた」——そうした相談が近年急増しています。AIを活用した特許出願は費用を抑えられる点で魅力的ですが、拒絶に至るパターンはほぼ共通しています。本記事では、AI明細書特有の3つの拒絶原因を解説し、そこからのリカバリーをどう考えるかをお伝えします。

AIは「書く」のが得意で「設計する」のは苦手

生成AIは、与えられた情報をもとに文章を構成する能力に優れています。発明の説明を入力すれば、それらしい明細書の形式を整えた文書を出力することができます。しかし、特許において最も重要な「権利設計」——すなわち、どの技術的特徴をクレームに盛り込み、先行技術に対してどの範囲で権利を主張するか、という戦略的判断——はAIには行えません。AIは過去の特許文書を学習してはいますが、あなたの発明の市場価値や競合技術との位置関係を踏まえて最適なクレーム設計を行う能力は持っていないのです。その結果、見た目は整っていても権利として機能しない明細書が生まれやすくなっています。

原因①:クレームが広すぎて先行技術に引っかかる

AIは指示を受けると、できるだけ広い権利範囲をカバーしようとする傾向があります。しかし広く書けば書くほど、既存の特許や公開文献と重なる可能性が高まります。審査官は特許庁のデータベースや国際文献を使って先行技術を調査し、クレームと同じか似た技術が存在すると判断すれば「新規性なし(29条1項)」または「進歩性なし(29条2項)」として拒絶します。AI出願では、この「広すぎるクレーム」による29条拒絶が最も多いパターンです。対応には先行技術との差別化ポイントを特定し、クレームを適切に絞り込む補正が必要ですが、どこまで絞ると権利として意味があるかの判断には専門知識が求められます。

原因②:クレームが狭すぎて権利として意味がない

逆に、AIが具体的な実施例をそのままクレームに落とし込んでしまうケースもあります。この場合、形式上は新規性・進歩性を満たして登録できても、取得した権利の範囲が非常に狭く、競合他社が少し異なる形で同じ技術を実施しても侵害にならないという状況が生まれます。権利として登録されても、実際には「使えない特許」になってしまうわけです。拒絶対応の過程で補正を重ねた結果、クレームが過度に狭くなってしまうことも起きます。最終的に権利化できたとしても、保護範囲が限定的すぎるリスクは常に念頭に置く必要があります。

原因③:明細書とクレームが整合していない(サポート要件違反)

特許法36条6項1号は「サポート要件」と呼ばれ、クレームに記載された発明が明細書(発明の詳細な説明)の記載によって裏付けられていなければならないことを定めています。AIで明細書を生成する際、クレームだけ広く書いて実施例の記載が薄い、あるいはクレームと明細書の用語が一致していないことが多くあります。こうした記載上の不整合は、審査官に36条違反として指摘されます。サポート要件違反への対応は難しく、明細書に記載されていない内容を後から追加することは「新規事項の追加」として禁止されているため、修正の余地が限られます。AIが生成した文章は体裁が整っていても、特許固有の要件を満たしているかどうかは別問題です。

「惜しかった」で終わらせない

AI明細書による出願の問題は、「もう少し工夫すれば権利化できたかもしれない」という惜しい状況で拒絶されるケースが多いことです。発明そのものに価値がないわけではなく、書き方と設計の問題で拒絶されているのです。拒絶理由通知が届いた段階では、まだリカバリーの可能性があります。意見書・補正書での対応だけでなく、場合によっては分割出願や国内優先権の活用も含めた戦略を立て直すことで、権利化の道が開ける場合があります。

AIで作った明細書が「惜しかった」だけで終わるか、権利として成立するかは、ここからの設計し直しにかかっています。拒絶を受けた段階で専門家に診断を依頼することで、リカバリーの可能性と最適な手続き方針が見えてきます。

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まとめ

AIで作成した特許明細書による拒絶は、①クレームが広すぎる(29条)、②クレームが狭すぎて権利として機能しない、③明細書とクレームの不整合(36条サポート要件違反)という3つのパターンに集約されます。いずれも「権利設計」の不備が根本原因であり、AIだけでは解決できない問題です。拒絶を受けた段階で専門家に状況を診断してもらうことで、費用と時間を無駄にせず最適な手続きを選択できます。

AI明細書の拒絶は、修正で対応できるケースと、設計から見直すべきケースがあります。どちらかの判断を誤ると、費用と時間を無駄にするリスクがあります。まず診断だけでも受けてみてください。

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