拒絶理由通知が来た——まず期限を確認する
特許庁から封筒が届き、「拒絶理由通知書」と書かれた書類を受け取ったとき、多くの方が「これで終わりか」と感じます。しかし拒絶理由通知は審査の終わりではなく、出願人に反論・修正の機会を与える手続き上のプロセスです。正しく対応すれば、特許として成立させることは十分可能です。まず冷静に、何が書かれているかを確認することから始めましょう。
対応期限は発送日から60日
拒絶理由通知書に記載された「発送日」から60日以内に、意見書または補正書(あるいは両方)を特許庁に提出しなければなりません。この期限を過ぎると、原則として出願は拒絶査定となり、権利取得の機会を失います。なお、延長申請により最大で3ヶ月の延長が認められる場合がありますが、延長には費用が発生します。届いた通知書をすぐに確認し、手帳やカレンダーに期限を記録することが最初のステップです。特に個人出願やAI支援による出願の場合、代理人不在で届くため期限の見落としが起きやすいので注意が必要です。
拒絶理由の種類を把握する
拒絶理由通知書には、拒絶の根拠となる特許法の条文が明記されています。条文ごとに対応策が異なるため、まず「どの条文に基づいて拒絶されているか」を確認してください。
新規性・進歩性の欠如(29条)
最も多い拒絶理由です。審査官が発見した先行技術(引用文献)と、あなたの発明が同じまたは類似していると判断された場合に通知されます。引用文献との相違点を明確にするクレーム補正と、技術的な差異を説明する意見書が基本的な対応策です。引用文献をよく読み、自分の発明と本当に異なる点を正確に把握することが重要です。
記載要件・サポート要件違反(36条)
明細書の記載が不十分、あるいはクレームに記載された発明が明細書の内容によってサポートされていないと判断された場合に通知されます。AIで生成した明細書に特に多く見られるパターンで、クレームの範囲が実施例の開示範囲を超えてしまっているケースがよくあります。補正で対応できる場合もありますが、根本的な記載の見直しが必要になることもあります。
単一性違反(37条)
一つの出願に、技術的につながりのない複数の発明が含まれていると判断された場合に通知されます。この場合は、主となる発明を一つ選んで審査を進め、残りの発明は分割出願として別途保護する方法が一般的です。単一性違反は、AIで広範に記述した明細書に含まれやすい問題です。
対応の選択肢は3つ
拒絶理由通知を受け取った後の対応は、大きく3つに分けられます。発明の価値、拒絶理由の内容、費用対効果を総合的に判断して選択します。
①意見書・補正書で応答する
最も一般的な対応方法です。意見書では審査官の拒絶理由に反論し、補正書ではクレームや明細書の記載を修正します。ただし補正には「新規事項の追加禁止」という制約があり、出願時に開示していない内容を後から追加することはできません。適切な補正と説得力ある意見書を組み合わせることで、拒絶を覆せる可能性があります。
②分割出願・国内優先権を活用する
現在の出願の一部を別の出願として切り出す「分割出願」や、現在の出願を基礎として内容を充実させた新たな出願を行う「国内優先権主張出願」を活用する方法です。権利化の戦略を見直す余地がある場合や、単一性違反を受けた場合に有効です。ただしいずれも費用が発生するため、発明の価値との比較検討が必要です。
③対応せず拒絶確定にする
発明の市場価値が低い、費用対効果が合わない、あるいは拒絶理由を覆すことが難しいと判断した場合は、対応せずに拒絶を確定させることも一つの選択です。拒絶が確定しても損はなく、その分のリソースを別の出願や事業活動に向けることができます。「撤退の判断」も立派な戦略です。
AIで作った明細書特有の問題
近年、ChatGPTなどの生成AIを使って特許明細書を作成し、個人または法人が自ら出願するケースが増えています。AIは文章生成の精度が高い一方で、特許権の「権利設計」——どの技術的特徴をクレームに盛り込み、どの範囲で権利化するか——という戦略的判断は行えません。その結果、クレームが広すぎて先行技術に引っかかる、あるいは狭すぎて守れる権利がほとんど残らない、という問題が生じやすくなっています。また、明細書とクレームの整合性が取れておらず、サポート要件違反を指摘されるケースも多く見られます。
拒絶理由を読んで「どこをどう直せばいいか分からない」と感じている場合、修正より先に発明の権利設計を見直す必要があるかもしれません。まず専門家による診断を受けることをお勧めします。
リカバリー診断を申し込むまとめ
拒絶理由通知が届いても、それは審査の終わりではありません。まず期限(発送日から60日)を確認し、次に拒絶理由の条文と引用文献の内容を理解することが重要です。対応方針は、意見書・補正書による応答、分割出願・国内優先権の活用、拒絶確定の3つから選択します。AIで作成した明細書の場合は、記載の問題が複合的に絡み合っていることが多く、部分的な修正だけでは解決しないケースもあります。
今回のようにAI明細書で拒絶された場合、意見書・補正書での部分修正ではなく、権利設計から見直す「再設計」が必要なケースが多くあります。当所では診断を通じて、最適な手続き方針をご提案しています。
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